「灰涙の時代」によって滅びる前の旧世界文明の時代を「蒼穹の時代」と定義します。これは、泥阿衆の神話において「かつて空は青く、大地は豊かであった」と語られる、失われた黄金時代です。
- 文明レベル:
- 現代(21世紀)の我々よりも遥かに高度な科学技術を有していました。
- 大気圏を制御するテクノロジー、大規模な地殻エンジニアリング
- 「灰涙の時代」の原因:
- 「蒼穹の時代」の繁栄は、地球の資源を過剰に搾取することで成り立っていました。
- 超巨大火山活動は、自然現象ではなく、地殻深部のエネルギーを無理に抽出しようとした巨大な技術的失敗によって誘発されたものでした。
- つまり、「灰涙の時代」は天災であると同時に、旧時代文明が自ら招いた人災でもあります。
- 神話への変質:
- この「技術的失敗」という事実は、4000年の時を経て完全に失われました。
- 災害を引き起こした旧時代の指導者や科学者たちは、後の世の人々によって「大地を怒らせた神々」や「天から追放された始祖神・荒貴神」として、神話の中に再構成されたのです。
F-0.1改: 蒼穹の時代 — 究極の共産主義ユートピア
「蒼穹の時代」は、高度な科学技術によって、人類が戦争、国境、そして資源の不平等を完全に克服した時代でした。彼らは、その最終段階として、人類を地理的・政治的に永遠に分断してきた「大陸」そのものを一つに統合しようとしました。
- 思想的背景:
- 彼らは、国家間の紛争や不平等の根源は、地政学的な断絶にあると考えました。大陸が分かれ、海によって隔てられているからこそ、国境が生まれ、資源の偏りが生じ、争いが起きるのだと。
- この思想は「究極の共産主義」とも言うべきもので、全人類が単一の大陸の上で、完全にフラットな社会を築くことを理想としました。
- 計画名: 「パンゲア・ウルティマ計画」
- これは、プレートテクトニクスを人為的に制御し、数千年かけて現在の大陸を一つに再結集させる、前代未聞のジオ・エンジニアリング計画でした。
- この計画の成功は、世界政府の樹立と、恒久平和の実現を意味していました。
F-1改: 根源的歴史事件 — 「灰涙の時代」の真実
この新しい設定に基づき、「灰涙の時代」のカタストロフの連鎖を再定義します。
段階1: 引き金 — 「パンゲア・ウルティマ計画」の破綻
- 何が起きたか: 約4000年前、計画は臨界点に達しました。大陸を動かすためにマントルへ過剰な干渉を行った結果、地球のプレートテクトニクスが予測不能な振る舞いを起こし、惑星規模のエネルギーバランスが完全に崩壊しました。大陸を一つにしようという行いが、逆に地殻をズタズタに引き裂いたのです。
- 結果: この破綻が引き金となり、制御不能となった地殻エネルギーが世界各地の超巨大火山を連鎖的に噴火させました。
(以降の段階2〜4は、以前の定義通りに連鎖します)
- 段階2: 暗転 — 火山の冬と成層圏汚染
- 段階3: 剥奪 — オゾン層の完全破壊
- 段階4: 溶解 — 数十年にわたる「酸性雨の長雨」
この設定がもたらす深み
この「失敗したユートピア」という設定は、物語全体に強烈なテーマ性を与えます。
- 神話の再解釈: 「始祖神・荒貴神」の追放神話は、この「パンゲア・ウルティマ計画」を主導した思想家や科学者たちの物語が歪んで伝わったものとなります。彼らは人類を救おうとした理想主義者であり、同時に世界を滅ぼした張本人なのです。
- 文化への影響: 泥阿衆が定住を嫌い、放浪を続ける「廻り」の文化は、単なる生活様式ではありません。それは、大地を無理やり一つにしようとした先祖の「大いなる罪」に対する、無意識の贖罪行為とも解釈できます。彼らは、大地を固定させず、自然な流れに身を任せることで、先祖の過ちを繰り返さないようにしているのかもしれません。
- 物語の皮肉: スパイアの民は、この計画の理想の断片を(歪んだ形で)継承しているのかもしれません。そして、泥阿衆が信じる「救済」の物語は、かつて世界を滅ぼしたユートピア思想の、皮肉な残響となっているのです。
素晴らしいアイデアです。これにより、単なるポストアポカリプス世界から、「思想と文明の失敗」をテーマとする、壮大な叙事詩へと昇華しました。
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