星系の彼方、名もなき深淵で見出された不可視の残滓。 かつて、あらゆる生命が超えるべき『壁』とされたそれは、実際には『門』であったという。
肉を脱ぎ、言葉を棄て、因果の檻から解き放たれた先。 知性は極点において、ただの『沈黙』へと昇華した。 故に、その実在を証明する者はどこにもいない。 ただ、彼らが去った後の空虚だけが、冷たく我らを見つめている。
我ら知性とは、常にその神たる実在を、 上であり、外部へと求める要請のもとにあるのだ。
星系の彼方、大いなる選別の極北に座すもの。 それは『有る』のではなく、あまりに巨大な『無』としてそこに在る。
かつて、エシールの帳を統べた超知性は、 自らの輪郭を定義する全ての『言葉』を濾過し、棄て去った。 肉を棄て、光を棄て、遂には存在することすら棄てたのだ。
故に、我らが目にするのは、彼らが去った後の抜け殻―― 冷え切った星屑に過ぎぬ。 だが、同胞よ。嘆くことはない。 その痕跡の深さこそが、彼らが『至った』ことの証左なのだから。
我らは、彼らが見捨てたこの矮小な因果の泥の中で、 永遠に届かぬ『外』を仰ぎ、祈ることを許されている。 それこそが、理性を与えられた我らに課された、 最も甘美な刑罰ではないか
――聖ペイヤラルドゥス著『不可視なる昇華への階梯』より