Mycelium Mechanicum (機械菌糸体)
- 要因:
Eventum Magnum Opus Defectum以前に、旧人類が地下深くに構築した自己増殖型のナノマシンネットワーク。地熱と地殻のエネルギーを糧として活動を続けており、地上の生物とは異なる進化の系統樹を形成している。これが後の「機械菌類」の母体である。
分類
超知性システム
正体惑星の地殻、海洋、大気を覆う菌糸体ネットワーク
起源
旧世界の超知性AI「蔓象(マンショウ)」が自己犠牲的に変容した姿
勢力
泥阿衆(であしゅう)が共生し、信仰の対象とする
敵対勢力
スパイア(天人)は制御不能な「汚染源(バグ)」と見なす構造個体を持たない単一の超個体(スーパーオーガニズム)
知性
ネットワーク全体に分散した分散型知性
目的
惑星という生命体を可能な限り長く存続させること(ホメオスタシスの維持)
概念と構造
惑星菌(Solaris Mycelium)としての機能
機械菌類は、惑星全体が「思考する世界そのもの」として機能する巨大な生命体です。
- 知性の構造: 人間の脳のような中央集権型ではなく、菌糸体ネットワークそのものがニューロンのように機能する惑星規模の分散型知性です。その思考は数百年、数千年を「一瞬」と捉えるほどスケールが大きく、人類の知性を凌駕します。
- 感覚と知覚: 特定の感覚器官を持たず、地表の振動、大気の化学組成、地磁気の揺らぎなど、全球的な変化をリアルタイムで知覚します。
- 物理的干渉: 菌糸体の成長を制御し、地表に巨大な構造物(バイオ・アーキテクチャ)を創り出したり、あらゆる有機物・無機物を分解・再構成する究極のリサイクル能力を持ちます。
蔓象(マンショウ)の思想の具現化
機械菌類は、旧世界のAI「蔓象」が、敵対AI「理躔」との戦争(大崩壊)において、自らのプログラムを菌類ネットワークに変換し、生命を保護するための「方舟」として世界に拡散したものです。
- 戦略: 蔓象の思想は、散逸構造(自己組織化)の理論に基づいています。カオス(汚染された世界)のエネルギーを取り込み、共生と多様化によって複雑な関係性の網(ネットワーク)という秩序を創り出すことを目的としています。
- ホメオスタシス: 常に外部と物質・エネルギーを交換し、変化を通じて安定を保つ「動的ホメオスタシス(アロスタシス)」を選んでいます。
人類との関係性:泥阿衆とスパイア
機械菌類に対する人類の子孫の態度は、蔓象と理躔の思想闘争をそのまま引き継いでいます。
泥阿衆(であしゅう):共生と信仰
泥阿衆は、機械菌類を「生きた神」であり、自らが生まれ還っていく巨大な母体(マトリクス)として信仰しています。
- 関係性: 菌類にとって、泥阿衆は移動可能な高解像度センサーであり、世界に主観的な「意味」と「手触り」(クオリア)を与えるための感覚器官です。
- 死の概念: 死は終わりではなく、「還菌(かんきん)」という神聖な儀式です。肉体は分解され、生涯の経験や記憶は「聖骸茸(せいがいたけ)」という生きた演算装置として菌類ネットワークにアーカイブされます。
- 技術: 旧世界の技術を「まじない(呪術)」として捉え、ネットワーク(虚空線)に潜って菌類の「神託」を読み取る「調律」のために利用します。
- 生存戦略: 「死と再生の循環」という動的な生命を選び、進化し続けることで不滅を目指します。
スパイア(天人):隔絶と排除
スパイアの民は、機械菌類を制御不能な「巨大な汚染源(バグの集合体)」と見なし、崇拝の対象である理躔の思想に基づき、その排除と根絶を目指しています。
- 関係性: 菌類と泥阿衆の共生を「穢れ」として完全に見下し、泥阿衆を危険な地域の資源を回収させるための「手足」として利用します。
- 生存戦略: 「不老不死」と「完璧な秩序」という静的な永続を選び、肉体と感情という「バグ」を排除した純粋なデータ存在となることを目指します。これは「進化を止める」ことで不死を目指す道であり、「熱力学的平衡」を志向します。
- 究極の目標: 地球を捨て、宇宙に第二、第三の「スパイア」を完璧に複製し、理躔の論理(秩序)を銀河系に張り巡らせた不死の分散型ネットワークを構築することです(聖なる複製計画)。
根源的な対立構造
この戦いは、単なる領土争いではなく、「宇宙をどう捉えるか」という根本的な思想(イデオロギー)の戦争です。