Rusted shore
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パンゲア・インパーフェクタの諸大陸

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「パンゲア・インパーフェクタ(不完全なるパンゲア)」

「灰涙の時代」の後、世界には「パンゲア・ウルティマ計画」の巨大な傷跡が残りました。それは、複数の大陸プレートが無理やり押し合わされ、引き裂かれた結果生まれた、一つの巨大な陸塊と、いくつかの大陸の残骸です。この歪な大陸を「パンゲア・インパーフェクタ」と呼びます。

この設定により、「灰涙の時代」のカタストロフは過去の出来事ではなく、歪んだ地形を通じて、今なお世界を苛み続ける現在進行形の現象となりました。泥阿衆は、この「出来損ないの理想」が創り出した、極めて過酷で不安定な大地を放浪しているのです。

## 1. 「腐食と減衰」の西大陸 (旧アメリカ・アフリカ大陸)

  • 個性・通称: 「涙に濡れる墓標」
  • 気候: 惑星規模の偏西風が最初にぶつかる第一の断層山脈の風上側。これにより、弱まることのない強酸性の豪雨が絶えず降り注ぐ、極度の湿潤地帯となっています。
  • 大陸の様相: ここは「終わりのない解体」が行われる土地です。大地は常に化学物質の雨に溶かされ、川は強酸性の濁流となり、旧時代の遺跡はもはや形を留めず、毒の沼地へと還り続けています。生命はほとんど存在できず、存在したとしても強酸に適応した異形の生物に限られます。
  • 現代大陸との比較 (理由):
    • ヨーロッパの古戦場: 数多の文明が興り、そして滅んでいった歴史の重みが、ここでは「物理的な崩壊」として現れています。
    • アマゾンの密林: 人間の侵入を拒む圧倒的な自然の力が、ここでは「化学的な暴力」として全てを飲み込んでいます。ここは、豊かさではなく、ただひたすらに分解と腐食が支配する土地です。

## 2. 「絶対的虚無」の中央砂漠 (白塵砂漠)

  • 個性・通称: 「沈黙の海」
  • 気候: 第一の断層山脈の東側に広がる、惑星で最も広大なレインシャドウ地帯(雨陰)です。大気は乾燥しきっており、雨という概念すら忘れ去られています。
  • 大陸の様相: 「剥き出しになった惑星の骨」が広がる世界です。西大陸で溶かされた大地の成分が風で運ばれ、ここで乾燥・結晶化し、見渡す限りの塩の平原と骨のように白い砂丘を形成しています。特異放射線の影響が極めて強く、生物の痕跡は皆無に近いです。地熱泉の周りに、かろうじて生命活動が維持される程度でしょう。
  • 現代大陸との比較 (理由):
    • サハラ砂漠やゴビ砂漠: 生命を拒絶するその広大さと過酷さが共通します。しかし、白塵砂漠は単なる乾燥地帯ではなく、化学的に「死んで」結晶化した大地であり、より根源的な虚無が広がっています。
    • ロシアのシベリア: 人口密度が極めて低く、人を寄せ付けない広大な土地という点が似ています。しかし、寒さの代わりに、ここでは放射線と乾燥が絶対的な支配者です。

## 3. 「生存と競争」の東方聖域 (旧東アジア)

  • 個性・通称: 「最後の揺り籠」
  • 気候: 旧ヒマラヤが増幅された第二の断層山脈によって、西からの汚染大気や極度の乾燥から守られた、奇跡的な地域。山脈からの雪解け水などが巨大な河川を形成し、生命の営みを支えています。
  • 大陸の様相: 「過密なオアシス」であり、物語の中心地です。パンゲア・インパーフェクタにおいて、人類(あるいはその後継者たち)が最も高密度で生存している地域です。限られた資源と生存圏を巡り、絶え間ない緊張と競争、そして奇妙な協力関係が生まれています。物語の舞台となる「錆浜」もここに存在し、超文明の遺産(セラミックと放射性廃棄物)と機械菌類との共生という、この世界で最も複雑な生態系を育んでいます。
  • 現代大陸との比較 (理由):
    • アジアのモンスーン地帯: 世界の人口が集中し、多様な文化や国家がひしめき合いながら競争・共存している点が酷似しています。限られた土地で多くの人々が生きるための知恵と、時に起こる熾烈な争いがこの地の個性となるでしょう。
    • 中東の古代文明発祥地: ナイルやチグリス・ユーフラテス川のように、限られた水源の周りに文明が集中し、その資源を巡って興亡が繰り返される歴史が、この「聖域」でも繰り広げられます。

## 4. 「謎と隔絶」の南方大陸 (旧南極・オーストラリア)

  • 個性・通称: 「忘れられた地」
  • 気候: 大陸の南端に位置するため極寒ですが、地殻変動による地熱活動が活発で、氷とマグマが隣接するような特異な環境が点在します。
  • 大陸の様相: 「孤立した実験場」です。他の大陸とは「アビス・リフト」のような巨大な谷や、極寒の氷原によって隔てられています。ここでは、禍域の環境に適応した生物たちが、他の大陸とは全く異なる独自の進化を遂げている可能性があります。旧時代の巨大な研究施設や避難シェルターが、氷の下に手つかずのまま眠っているかもしれません。
  • 現代大陸との比較 (理由):
    • オーストラリア大陸: 大陸から隔絶されたことで、有袋類のような独自の生態系が育まれた歴史が参考になります。この南方大陸では、さらに奇妙で異質な生命が満ちていることでしょう。
    • 南極大陸: 人類にとって未知の領域であり、過酷な環境下に何が眠っているか分からないという神秘性が共通しています。観測基地の残骸や、そこに残された超文明の遺産などが物語の鍵を握るかもしれません。