手紙には、自らの名を忘却したと綴られてた。
封書には古い一文と、どこの国のものでもない硬貨。
存在しないはずの設計図が、ありもしない階層へと私を導く。
部屋の隅、沈殿した時間の残骸を、私は匙ですくい上げた。
窓の外に貼り付いた夕景は、ガラスに張り付き動くことを拒んだ。
埃ひとつ舞わぬ光が、彼を緩やかに縛っていた。
どこへも去っていないなかったのだ。
ただ、この四角い部屋に少しばかり溶けて。