部屋は、止まったままの湖。 今日も、一滴も動かなかった。
キッチンには水垢のついたアルミのボウルと、脱皮に失敗した黄色いゴムの皮膚。
棚には、おまけで貰ったマグカップや、干からびて張り付いた輪ゴム、スーパーのチラシ。
私はただ、お茶を飲みながら、紙を前にして、今日の出来事を埋葬する。
窓の向こうの電柱が、乱杭歯のようであればいいのに。
私の影も、この部屋も、少しずつ裏返ればいいのに。
あるはずのない変化を探しながら、野菜を切り、火を通し、形を変える。
あるはずのないシチューが、 明日またそこにあること。